ヤナギダ、歯根膜炎に倒れる!
そんな噂を耳にした旧友から、国際電話がかかってきました。
「いやぁ、災難だったねぇ」
「いやいや、それがさぁ」
とりとめのない会話の後で、彼女は、
「だけど、私も昔、歯医者にはえらい目にあったのよ」
と、体験談を話し始めました。それは、〈親しらずの抜歯〉にまつわるものでした。
ご存じの方も多いと思いますが、顎のスペースが足りなくて、親しらずが真っ直ぐに生えない例が少なからずあります。かくいう私もそうでした。そうした場合、親しらずは、表面になかなか出てこず歯茎のなかで育っていきます。
すると、どうなるか? といえば、おおよそ横向きに生えてしまうのです。
私の場合は、十代後半から左下の親しらずが、このような形で成長し始め、春を迎えるごとに痛みを感じました。というのも、上に向かうスペースがない故に、横向きに生えようとする親しらずが、春の成長期に、前にある歯や下顎をプッシュしたからです。
こういったケースでは、結局、抜歯するしかないようですが、抜歯といっても、〈横向き+歯茎の中〉ですから始末が悪い。一般の歯科医の手にあまる処置で、通常は大学病院で抜歯することになります。
私も同様でした。近所の歯科から、お茶の水の日本大学歯学部付属歯科病院に送られて、先生方4人がかりで40分かかって、「歯茎の切開+抜歯」という、ちょっとした手術を施されました。確か、歯茎の切開で、5針縫ったように記憶します。
ただ、私は、手術時20歳と若かったことが幸いし、その夜は、痛み止めを飲んで熟睡。翌朝も、普通にアルバイト先に赴くことができました。
一方、実兄は、同じことを25歳時にしたのですが、それはもう大変でした。親知らずを抜歯したサイドの頬が、まるで〈こぶとりじいさん〉のごとくふくれ上がってしまったのです。あまりのこぶとりぶりに、記念写真を撮ったほどでした。
さて、国際電話の彼女も、こうした親しらずの持ち主でした。そこで、大学病院に行くことになったのですが、片方の親しらずは普通に生えていたので、まずは、そちらを近所の歯科医で抜くことにしました。
ところが、抜歯作業が始まってしばらく経った時点で、歯科医がいきなり、
「あ、間違えた!」
と、言うではないですか。
何事が起きたのかと事態を見守る彼女に、なんと歯科医は、
「レントゲン写真を逆さに見ていた。俺、大学病院で抜くはずの方の歯を抜き始めちゃった」
と、伝えたのでした。
ウッソー!
町医者ですから、複雑な親しらずを抜歯するための器具もなければ準備もしていません。しかし、
「抜き始めちゃった以上、途中で止めるわけにはいかない」
と、医師。
緊急で助手も加わり、〈苦肉の抜歯作業〉が繰り広げられました。
でも、歯は横向きですから、抜こうとする度にボロボロと砕けてしまいます。そして、その度に、
「まいったなぁ〜」
という、医師たちのぼやきが聞こえてきます。
おっかないなんてもんじゃありません。結局、そのように恐ろしい状態が2時間近くも続き、ようやく彼女は親しらずとサヨナラしたそうです。
「だからさ、痛い思いをしたのはあなただけじゃないってことで」
「うーん、お互い、医者選びは慎重にいきたいね」
そんな会話が、太平洋をへだてて交わされたのでした。
こわっ!( ̄ー ̄)
【歯根膜炎に関する参考サイト】
→歯チャンネル88「歯根膜炎と思われる症状だったのに抜髄、しかもまだ疼きます」
→歯根膜炎《河田歯科医院》(歯根膜炎について図解しています。ただし、私が通院した歯科医ではありません。)
【その他の参考サイト】
→YOSHIDA DENTAL CLINIC (親しらず+抜歯について詳しく書かれています。ただし、私が通院した歯科医ではありません。)