痛いの痛いの飛んでいけ!
そんな祈りも虚しく、いっこうに激痛はおさまりません。4、5時間おきにロキソニン(痛み止め)を飲み、日に3回、ケフナール(抗生物質)を服用し、氷枕を抱えてうずくまる毎日です。
第2の医師は、痛みがひくようにと必死に治療してくれるのですが、なかなかそうなりません。ただ、この先生の懸命さには大変感銘しました。誠実な治療に、私は、とにかく今は、この人についていこうと決めました。
第2の医師が診断した私の歯根膜炎の原因は、刺激。これを抑えるために、先生は、さまざまな手を打ってくれました(【23日目】止まぬ激痛に、穴を半開き - 悶絶の歯根膜炎参)。
それでも、まったく消える気配のない激痛に、先生は、最終的に究極の裏技ともいえる穴の全開を選択しました。つまり、歯を削り神経を取った穴の部分に、セメントどころかコットンさえも埋めず、空気にさらすのです。そうすることで、圧力(刺激)を抑えるというイレギュラーな治療法です。
それほどまでに、私の痛みは激しく、長期間におよんでいました(ちなみに、全開にしても、きちんとうがいをしていれば、細菌が入り込んでしまうことはまずないそうです)。
だけど、無念にも、この方法も効きませんでした。
確かに、全開にした直後は開放感があってスッキリしたのですが、すぐにチクチク、ヒリヒリとした痛みが、いつもの痛みに加わりました。その上、発熱(37.5度くらい)も始まりました。こわごわと鏡を覗くと、抜歯した穴の底に神経を取った丸いミゾが4つ、ふか〜く、くら〜く空いていました……(まるでスーピンみたいに……)。
この頃、なかなか帰って来ない私に、アメリカの家人から電話がかかってきました。
「アメリカで治療を続けたらどうなの?」
家人にそう言われた瞬間、私はいみじくも号泣しました。帰れるものなら帰りたい。が、激痛のために、気圧変化のある飛行機に搭乗できないのだ! なんたる八方塞がり!! なんという袋小路!!! 31日目にして、遂に緊張の糸が完全に切れてしまった私は、受話器の前で泣き崩れました。
それでも、打つ手がない私は、毎日、第2の医師のもとに通いました。全開にした穴を洗浄してもらい、うがい薬や痛み止めをもらうのです。
私は、「いっそ抜歯してください」と、先生に頼みましたが、
「原因がわからない以上、抜歯しても痛みが続く可能性は否定できない。その場合、抜歯自体が無意味になる」
とのこと。抜歯さえダメなのか……。
ここまでくると、誠実な第2の医師もお手上げで、とうとう、
「残念ながら、私の手には負えないかもしれない。大学病院に行くことも考えて欲しい……」
と、白旗を上げてしまいました。
さらに絶望的なことに、大学病院でも歯の根の専門医は限られており、また優れた専門医は週に1、2回しか現場に立たないし、予約も取りにくい由……。
いったい、いつになったら家に帰れるのか?
そんなことより何より、激痛は治まるのか??
おまけに、間もなく夏休み。飛行機の便を変更しようにも、だんだん空席がなくなっているというではないですか。秋まで日本にとどまるのか??? 私は、ふとそんなことを考え始めていました。
【歯根膜炎に関する参考サイト】
→歯チャンネル88「歯根膜炎と思われる症状だったのに抜髄、しかもまだ疼きます」
→歯根膜炎《河田歯科医院》(歯根膜炎について図解しています。ただし、私が通院した歯科医ではありません。)
【その他の参考サイト】